医療法人設立専門事務所の選び方
1.医療法人設立専門行政書士事務所の選び方
制度上、医療法人の設立は自分で申請することが可能です。院長先生は診療で忙しいですから、院長先生自身が自分で手続きしたという話はききませんが、事務局の方が手続きすることは可能です。
しかしながら、現実は、多くの方が医療法人設立申請のサポートを行政書士に依頼します。
それはなぜなのでしょうか。
多くの方々が役所で手続きをするのは嫌だといいます。ドクターであれば、なおさら大変です。
役所、それも医療法人の担当窓口という慣れない役所にいろいろな書類を出し、調査されることを想像するだけで、行きたくなくなります。
また、医療法人の設立申請の窓口は多くの場合都道府県、医師会や歯科医師会となっており、平日の昼間しか開いていません。
普通の医師や開業をしているドクターは仕事を抱えて役所に何度も足を運ぶことは困難なことでしょう。
その上、予想もしていなかったことにつき問い詰められ、何をどうしたらいいのか分からなくなってくることもあります。
また、医療法人の担当窓口から医療法人の設立申請後、追加資料を要求されることもあります。
「なぜ?」と思うかもしれませんが、これは、医師であってもは医療法の細かいところまでは知りませんから、医療法人の担当官が何を疑問に思って追加資料提出を求めたのかわからずに対応しているからです。それで、お金を払って行政書士に依頼するほうが楽だという結論に達し、結局、行政書士に依頼するところに落ち着くわけです。
行政書士に依頼するにはまず、医療法人設立を扱っている行政書士を探す必要がありますが、 インターネットで検索するとたくさんの行政書士事務所や税理士事務所(※行政書士登録をしていない税理士事務所は手続きできません)がホームページを作り、医療法人設立申請業務のアピールをしています。
私たちもその行政書士事務所のひとつです。
では、行政書士に依頼してスムーズに運ぶかどうかの明暗はどこにあるのかを考えてみましょう。
最も重要なのは、やはり第一印象です。
依頼する側に立って考えれば、次のような点が重要になってくるかと思います。
①行政書士は親身になってくれそうか、②過去の経験は豊富か、③すぐ連絡が取れるか、そして④医療法人設立申請の料金はいくらか、等です。
2.医療法人設立専門行政書士事務所を選ぶ際のポイント
医療法人設立申請の専門家である行政書士に、医療法人設立申請を依頼しようと思った時、どの行政書士がよいのだろうか、どの専門家に相談や依頼をしたら良いのか、実際、判断に困るのではないでしょうか。
そこで、以下、失敗しない行政書士事務所の選び方のお話をします。
①医療法人設立申請の費用は適正であるか
医療法人設立請の費用は、行政書士事務所によって大きく異なります。
医療法人設立申請費用が安い事務所もあれば、医療法人設立申請費用が高い事務所もあります。
相見積もりを取られたお客様の見積もり書を見せていただいたら、医療法人設立申請費用が、A事務所では50万円、B事務所では150万円、3倍も違うケースがありました。
これだけ費用に大きな差がある場合、両事務所のサービスは同じものではないと考えるべきです。
ただ、どんなものでも安いものには裏がありますので、安い事務所を選んだほうがいい、ということにはなりません。
医療法人設立申請の業務が安い事務所は大きく2つのパターンがあります。
一つ目は、経験の浅い行政書士本人が業務経験をつむため、安い値段に設定して集客を容易にしているパターンです。他業務の記載がたくさんあり、WEBサイトの隅っこのほうに記載をちょこっとしている事務所はほとんどがこのパターンです。
2つ目は、大規模な事務所に多く見られるのですが、若者を安い賃金で採用し、広告費を投入して、大量に集客するパターンです。WEBサイトを見ると、しっかり作りこんであり、信頼できるように見えるのですが、何分担当者の経験が浅く、また多くの場合、後述のように分業体制をとらざるを得なくなります。
②医療法人設立申請やそれ以外の知識や経験値が豊富であるか?
医療法人設立申請業務は、裁判や医療における手術に似たような性質を持ちます。この業務は「誰がやっても同じ」ではありません。依頼する行政書士事務所の持つ「知識」と「経験値」によって結果が大きく異なることがあります。
医療法人設立申請を依頼するお客様が、C事務所に依頼した場合とD事務所に依頼した場合では、同じ結果にならないことがあります。
例えば、単純に「従業員を監事として申請しようとした場合」場合を想定してみましょう。
C事務所は、従業員は監事に就任できず、不許可理由になることを経験上知っていますので、早急に監事を変更してから申請しましょう、と提案しました。
D事務所は、従業員かどうかなんて役所にはわからないからそのまま申請を行い、担当者に言われたら変更しましょうと提案しました。
C事務所に依頼した場合、事前に監事を変更しておいたので、申請は無事許可になりました。
D事務所に依頼した場合、調査で監事の資格がないことが発覚し、その結果不許可になりました。
このようにご依頼される専門家(行政書士)により、大きく結果が変わることがあります。
また、医療法人設立申請業務を行うにあたっては、税金や社会保険の知識があるかどうかも重要なポイントです。当該申請に関する知識はもちろんですが、それ以外のことに対しても知識や経験値の高い行政書士に依頼することが重要です。
行政書士等の専門家はは医師と同じで国家試験に合格してはいます。
試験に合格したばかりの医師は経験値が低く、知識が乏しいです。ミスも多いでしょう。新人の医師に手術を任せるのは怖いです。
腕の良い医師は、10年、20年と多くの経験を積んでいます。
医療法人設立申請の専門家も同じです。あなたは、医療法人設立という失敗が許されない重要な場面で、新人の研修中の行政書士に申請を任せられますか?もし失敗したら、節税できず、資金繰りは悪化、さまざまな事前の投資資金も返ってこず、何割かは無駄になります。
実務では、
a.医療法人申請を許可されやすくするテクニック
b.役所とトラブルを起こさないようにする説明力
c.書類のミスがないか調べる調査力
その他にも、様々なノウハウが必要ですが、これらは試験範囲ではなく、実務経験を10年以上積まないと見えません。
実務経験をどれだけ多く積んでいるのかがチェックポイントです。
士業の場合、年齢を重ねてから資格を取得したり、開業する方も多いので、知識や経験値を見極めるには、少なくとも10年以上の実務経験が必要と思われます。
ですので、どの程度の件数をこなしているか一度確認してみることが安心でしょう。
ビザ申請は失敗するとリカバリーが難しくなりますので、費用が安いだけで事務所を選ぶと、実務経験の浅い担当者に遭遇する確率が高くなり、大きな損をすることになる可能性があります。
③大きな事務所より小規模な事務所がよい
ここはよく誤解されがちなのですが、一見、確かに大規模な事務所に任せたほうが安心なような気がします。
ただ、実務の観点からすると、大企業向けの大きな仕事であれば、大きな事務所でないとこなせないケースがありますが、医療法人設立申請は多くの場合、個人のクリニックや一人医師医療法人からの依頼になります。このように、小さな個人からの仕事であれば、大きな事務所より、小規模な事務所がよいです。
ではなぜ、小規模な事務所がよいのでしょうか。
これは、
知識や経験値が関係することですが、システム上、大きな事務所では、知識や経験値がない人が担当となることがどうしても多くなってしまうからです。
行政書士は、一般的なビジネスと異なり、資格さえあればすぐに独立が可能です。
そのため、知識や経験を積んだ優秀な人は雇われるより自分で行った方が収入が増えるので独立します。
そして、知識や経験のない資格のない人は、独立できないため残ります。
大きな事務所は、優秀な資格者の離職率が高く、能力の低い人が増えていきます。
大きな事務所の経営者は、経営の能力に長けていますが、経営に時間を費やすため、専門知識や経験値は低いです。
そして、若くて知識や経験のない人が担当者になります。ですから、専門知識に乏しく、依頼者が損をするケースがあります。
また、仮に専門知識があっても、大きな事務所では全部を一人の担当者が行うことはまれで、通常は複数のスタッフによる分業体制となります。
そうすると、申請内容がつぎはぎのようなものになり、全体を通して適切なアドバイスを行うことが難しくなるという問題があります。
このような状況は医師も同じです。大病院にはたくさんの医師がいますが、大きな病気しか扱いませんので、一名あたりのオペ数は少なくなります。一方、小さな病院では医師数が限られていますので、少ない人数でたくさんの手術を行わないといけません。
そのため、結果的に医師1名あたりの症例数は多くなり、手術の腕の良い医者が増えやすくなるのです。
これと同じく、小さな行政書士事務所のほうが、行政書士1名あたりの担当件数は多くなりますので、小さくても専門的に業務を長くやってきている事務所は、実務経験豊富ですから、難しいケースにも対応可能です。
また、大きな事務所は倒産することがあります。毎月、発生する多額な人件費を支払わなければならない大きな事務所は、借入(借金)が多く、何か間違えると倒産します。
安心できる中小規模の行政書士事務所との付き合いが理想です。
ただ、注意しなければいけないのは、個人からの依頼は小規模が良いのですが、事務員が一人もおらず、1人で行っているような事務所は、電話対応もままならず、その人が病気で対応できなくなることもあります。
ですから、一般に、3~5人前後の事務所ですと、経営者(代表の行政書士)の目が届き、教育・指導がされ良いサービスを行っていることが多いと言えます。
④お客様への対応はよいか?
ぶっきらぼうな専門家
丁寧な専門家
親切な専門家
横柄な専門家
質問に適格に回答してくれない
事務所によって、対応は大きく異なることがあります。
お客様の感想が判断材料の1つになります。
電話で問い合わせをした際、
どのような対応なのかを観察されるとよいでしょう。
⑤他士業と行政書士が連携して業務を行っているか
医療法人設立申請業務は、ほとんどが行政書士がサポートしています。
しかし、ビザ申請のプロセスの中で、税金や社会保険の手続き等が必要になることもあり、行政書士ができない業務もあります。
税金は税理士、社会保険は社会保険労務士、この2つの資格者です。
税務申告は、税理士ができ、行政書士にはできません。
社会保険の加入手続きは社労士ができ、行政書士にはできません。
全ての必要を効率良く、安価に行うには、他の士業事務所ときちんと連携をとって業務を行っている事務所の方が良いでしょう。
3.まとめ
以上のように、失敗しない医療法人設立専門行政書士事務所の選び方は、5つのポイントが大事です。
1『医療法人設立申請費用は適正であるか』
2『医療法人設立申請業務以外の知識や経験値が豊富であるか』
3『大きな事務所より小規模な事務所がよい』
4『お客様への対応はよいか』
5『他士業と連携して業務を行っているか』
これらに着眼し、医療法人専門の行政書士事務所を選ばれれば、良い事務所とめぐり合える可能性が高いと思います。
医療法人設立申請は失敗すると大きな損害が出る大事業ですので、専門家選びはくれぐれも慎重に行うようにしてください。
実際、多くの方が自分で申請を行うか、行政書士などの専門家に依頼するかで悩まれることと思います。これは申請しようとする状況などによって異なるので、明確にどちらが正解とは言い切れません。
ただし、見る限り、院長先生と医療法人化の相談をしてみると、難しいケースを簡単に考えていたり、逆に些細なことをものすごく気にしているケースがかなり多いです。
実際に行政書士が行う場合と本人申請の最も大きな違いは、医療法人設立申請に関する経験の違いです。一般の方であれば多くても医療法人設立申請を行うのは一生に数回なのに対し、事務所にもよりますが行政書士はその数十倍から数百倍の件数を申請しています。当然、仕事として多くの経験を持つ行政書士の方が、申請のコツや役所の考え方などを熟知しているため、許可となる可能性は高まります。
また、事務所のサービス内容にもよりますが、行政書士であれば申請中にトラブルが発生した場合や不許可となってしまった場合でもしっかりと対応してくれるはずです。
ですから、少なくとも金銭的に余裕がある場合は、医療法人設立専門の行政書士に依頼するほうが確実に手続きはスムーズにいくはずですので、ちょっとでも気になることがあれば、まずは相談してみることが重要です。
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